2015年11月24日火曜日

リングキーのPhilipp Hammigフルート

Philippも他のドイツフルートと同じく、特に東西分裂時代はカバード・キーで知られていますが、リングキーのものを見つけました。













製造番号や、B&S、そしてMade in GDRの刻印を見ると、旧東独時代でも最後のほう、おそらく1980年代後半ではないでしょうか。

Eメカ無しなのが目を引きます。そしてポイントアーム。
それでもGAトリル付きで、プラスチックのリッププレート頭部管があるところがドイツらしいですね。

今でこそ見直される動きもあるものの、西ドイツでもリングキー使用者が増えていたと思しき当時。
輸出産品でもあったPhilipp Hammigのフルートも「リングキーのものを売ろう」となっても、状況的には不思議ではないような気がします。

以前Helmuth Hammigのリングキーが売りに出ていたとき、オリジナルか後改造かで話題になったことがありますが、この場合はどうでしょう。

2015年11月22日日曜日

Paul Krebsのフルート

Paul Krebs パウル・クレブスの総銀フルートを吹く機会がありました。

Philipp Hammig以上に情報が無いフルートだと思います。

東独のプロなどに愛用されていたらしいのですが、一般に知られていないのは、Hammigと違って輸出されていなかったのが大きいのだとか。
であれば、Hammig以上に、当時の東独らしさ全開、タイムカプセルのようなフルートなのかもしれません。


Paul Krebs(1915-1989)

1930-33年にErlbachでUbelに学ぶ。
1953年自身の会社を設立、
1963年にSinfoniaグループに入る。
1986年引退すると、"Flötenbau Erlbach" (Flutemakers Erlbach)名義のフルートに統合される。

エアルバッハ(Erlbach)という、マルクノイキュルヒェンのほど近くで、Ubel系の職人として活躍していたようです。

"Sinfonia"というのは、旧東独の国営企業だったようで、J.G.時代のPhilipp Hammigも属していました。


総銀のPaul Krebsを吹いてみると、近い時期と思しきPhilipp Hammigよりも引き締まった音色。
音色の傾向としては、Philipp HammigやA.R.HammigよりもHelmuth Hammigに近いような印象を受けました。
同じ頭部管で胴体だけ試しても、そういう傾向。
管厚は、Philippよりも厚いようなので、ここら辺が音質に影響を及ぼしているのでしょう。
とはいえ、昔のドイツ同士の比較なので、今の平均的なフルートよりも薄いですが。

特筆すべき点としては、2オクターブ目のド#、レあたりの音程はPhilippよりも良いと感じました。
ここらへんもHelmuthに似ているかもしれません。

一般的な視点で言えば、Philippよりも人気の高いHelmuthに方向性が近いということは、吹いたことがある人々からの高評価も納得がゆくところです。

自分が吹いたものは、A=442で何ら問題はありませんでしたし、音量もPhilippと遜色無しといったところ。

生産本数を見ると一人で作っていたわけではないと思いますが、PhilippやA.R.と違い、親方が代替わりせず一代限りの職人といえるようなので、より責任者ははっきりしていると言えるかもしれません。
素晴らしいフルートです。

2015年11月21日土曜日

Philipp Hammig Fluteとの出会いと特徴について

初めてPhilipp Hammigのフルートに出会ったのは、某店にあった総銀のもので、何となく試奏させていただいたのですが、これがもう滅茶苦茶に良くて、それまでのフルートの概念が覆されました。

とにかく息が入った後が太くて、素朴で温かい音が・・・。
内径の太さと管の薄さ、そして旧東独のコインシルバー(.900)など色々な要素があるのでしょう。

今から見ても相場を大幅に上回った金額だったので購入を見送ったのですが、その後買った本数や費やした時間を考えると、買うのが正解でした。

おそらく60~70年代のものでした。
歌口はややスクエア寄りで大きめで、吹きやすかった。
今思えば、改造されていたかもしれません。


多くの歌口は改造済?


その後何本も見て思うのは、オリジナルと思しきものは少ないと言うことで、Philippに限らずヴィンテージのドイツものの歌口は、かなりの確率で改造されていると思います。しかも大胆に。
当時はそれが普通だったのかもしれません。


Philippの音は胴部が要?


もう一つの特徴は、今まで色々なPhilippの胴(足部含む)と頭部管を挿し換えて吹いてみましたが、Philipp Hammigの音の個性は、胴部のほうで作られている部分がかなり大きいということです。
他国のものはもちろんのこと、たとえドイツ物同士で換えてみても、Philippの胴部がもたらす温かい音は異彩を放っています。
ちなみに足部管だけ別のドイツのものに換えただけでも、右手方面の鳴りは 思い切り変わってしまいます。

今振り返ると、あのとき吹いたPhilippと同じくらい好きなPhilippには、正直、出会っていません。
やはり個体差や改造歴などで、それぞれ違いますね。
ただ、この違いは特に頭部管によるところが大きかったと思います。
胴部に関しては、60~80年代あたりのものに関しては、どのPhilippにも大きく共通する良さがあるように感じました。

初代のPhilipp時代のものは、見た目からしてかなり違うので、その限りではありませんね。これについてはいずれ書けたらと思います。

考えてみると、いまPhilipp Hammig名義で売っているフルートのほうが、J.G.Hammigがオーナー時代(1959~94年)の形に近くて、今J.G Hammig名義で売っているものは、世の一般的なフルートに近いように見えますね。

2015年11月20日金曜日

Philipp Hammigのモデルによる違い(総銀)

http://www.wind-instruments.ru/html/hammiginstruments.html
http://www.klaus-dapper.de/artikel/sonic/2002_4_30_33_hammigfloete.pdf

フィリップのフルートの品番については上記2サイトが委しい。

http://www.hammig-boehmfloetenbau.de/index.php/en/philipp-hammig

そして現・公式のこちら↑

658が木管、663が銀メッキ、666が総銀(旧来のものは.900で、今は.925らしい)。
ピッコロは650、アルトフルートは667、バスフルートは668のようです。


総銀666だと

666/1:Eメカ、ハイG-Aトリルキー付
666/2:Eメカ付
666/7:ソルダード・トーンホール
666/8:ソルダード・トーンホール、巻き管

となっている模様。

この666の後にある1,2,7,8の数字は、658や663など違うモデルになると、必ずしも同じ意味ではなくなるようです。

666シリーズの中では圧倒的に666/1か666/2を多く見る気がします。
まだ一度も見たことがありませんが、666/8は一体どんな音がするのでしょうか?


また、有名どころですが、1960年代70年代あたりは、製造番号の前に製造年(下2桁)が付いていたそうで、たとえば"69/5365"とあったら、1969年製のことだそうです。

2015年11月19日木曜日

Hammig Family

ハンミッヒの家計図としては以下のものが知られているかと思います。



上の画像が西独のJohannes~Bernhard系統、下の画像が東独のPhilipp~August系統を委しく書いています。


 1906年から20年の間、August Richard(1883-1979)とPhilipp(1888-1967)の兄弟は、父Gustav Adolf Hammig(1858-1947)の工房で働き、その後A.Rはザールブリュッケンへ、Philippはベルリンへ、リッタースハウゼンの会社にフルート製作を勉強しに行ったそうです。

Philippはマイスターの資格を取得し1920年にフルートメーカーとして独立。
1941から父(Philipp)の元で修行を始めた息子Johannes Gerhard Hammig(1927 - 1995)が1959年に工房を引き継いだ(もちろん、1959年以前も、Gerhard作のものもあるだろう)。

1994年にはGerhardの子供たち、つまりPhilippの孫に当たる、Gunter(1959-)とFrank Hammig(1960-)に工房を引き継いでいる。
同じく1994年の夏、PhilippとA.R.のブランドはKarl Christian Lederer社を買収し、多少の変動はあるでしょうが、今日20余人の従業員がマルクノイキルヒェンで製作を行っており、同じ工房でJ.G(Philippの子Johannes Gerhard)、A.R.、そしてPhilippの3ブランドのHammigが製作されている。


ちなみにA.Rの子Helmuth(1908-1995)は修行の後ベルリン(東独)で、Johannes Erhard(1911-1993)はフライブルク→ラール(それぞれ西独)で、高名な製作家となった。


たくさんいる"Johannes Hammig"


混同しやすいのは、何と言っても"Johannes"がたくさんいることですね!
HelmuthもJohannes Helmuthなんですね。

フルート界で一般に"Johannes Hammig"と言われるのは、A.R.の子にしてHelmuthの弟で、西独に移ったJohannes Erhard Hammig(1911-93)が立ち上げたメーカーのことです。

上のほうの家計図によると、Johannes Erhardの子Johannes Gottfried(1935-99 この人も"Johannes"笑)、またJohannes Gottfriedの子であるBernhard Ludwig(1966-)もJohannes Hammigブランドの製作に当たっていたようです。

もう一方の"Johannes"は東独系、Philippの息子であるJohannes Gerhard(1927-95)で、彼の死後"Johannes Gerhard Hammig"ブランドが立ち上がりました。

今日では、西独系のBernhardが自らのブランドとして独立し、Johannes名義の製造を止めた(たぶん)こともあり、"Johannes Hammig"と検索すると、東独系のJohannes Gerhard Hammigのほうが出てくるのがややこしいところです。

しかも西独系のJohannes Erhard Hammigと東独系のJohannes Gerhard Hamiigが一字違いという(笑)。


個人的には、ヴィンテージのハンミッヒとして認識されるのは、A.R.、Philipp、Helmuth、Johannesの4ブランドです。
J.G.とBernhardはヴィンテージというより現代のフルートという印象です。

Philippの場合、1990年代あたりまで1960年代と同じような作り方をしていた部分も多く、1990年代のものであっても、特に1994年までのものは十分な連続性を感じることができるかもしれません。
1990年代とされるものを吹いてみても、ヴィンテージの風味は多分に残っていました。

2015年11月18日水曜日

Philip Hammigのフルート

ドイツで100年以上に渡りフルートを作ってきたHammig(ハンミッヒ)一家。

Helmuth(ヘルムート)やJohannes(ヨハネス)が名高いですが、特に温かく茫洋とした音を出すPhilipp(フィリップ) Hammigも本当に素晴らしいものです。

Philippは今日ではピッコロの製作のほうで知られていますが、フルートも忘れられないような音を出します。

こちらの演奏は、それぞれの個性が良く出ています。
August Richard(Philippの兄)のほうはリッププレートがプラスチックだったり、そもそも管体の材質もそれぞれ同じかは不明ですが、傾向は出ていると思います。







意外と、こういう何気ない演奏に楽器の特性が素直によく出ますよね。
Philippの何とも温かい音色がたまりません。

日本語の情報があまりないようなので、これからPhilippのフルートを中心に色々書いてゆきたいと思います。