2017年1月5日木曜日

664/1のPhilipp Hammig











売り主によると、数回しか吹かれたことが無く、オリジナルパッドで1970年代の銀メッキのものとのことですが、製造番号(180XX)やキーの形状を見ると、1980年代後半のものではないでしょうか。

キーのところどころが国際標準=フランス寄りになっています。足部管のキーもドイツ統一後ではなく既にGDR時代に変わっていたのですね。

以前取り上げたこちらのものは、製造番号がより最近と思われる195XXなのに、足部管のC#、E♭にローラーがついているのも興味深いです。

唄口はけっこう丸い。


注目は"664"の記載。

ヴィンテージのPhilipp Hammigといえば木管の658、洋銀の663、総銀の666が知られていますが、664というのもあったのでしょうか。

見た目は銀色ですが、タグにある"664/1""gl platt"という記載を見ると、考えにくいですが、もしかしてホワイトゴールドのメッキか何かなのでしょうか。

また、写真を見る限りでは"900"等の刻印も見当たらず、洋銀にメッキをかけたということでしょうか。

そもそもタグが間違っているのか。

2016年7月1日金曜日

2005年のPhilipp Hammig









こちらのPhilippは2005年製とのことです。

クラウンやG#キーなど、昔と変わらないような部分を残しながらも、足部管のキーはローラーも無くなり国際標準のものに近くなったりしていますね。

また、ドイツの銀といえばコインシルバーと言われる.900が知られていますが、今は.925のスターリングシルバーですね。
.925以後のものはもはやヴィンテージという感じではなくなります。

今は普通にリングキーも作っていますし、こちらはインラインリングキーのEメカ無しですね。

歌口の穴も大きく、少しショルダーカットされているかな?大きな音が出せそうです。

見た目同様、昔のハンミッヒらしさと、現代の一般的なフルートらしさとが混ざったような音がしそうです。

2016年3月25日金曜日

Rittershausenの総銀

E.Rittershausen(リッタースハウゼン)の総銀を吹かせていただきました。

先にも書いたように、A.R.とPhilippのHammig兄弟が修行したメーカーですね。
20世紀の初めごろのものがたまに売られているのを見ます。

今回吹かせていただいたものもやはり20世紀はじめごろと思われるものです。

興味深かったのは、1960~70年頃のドイツのフルートたちよりも、19世紀後半~20世紀初めのフランスのフルートに似たようなものを感じたことです。
louis lotやBonnevilleのような、複雑でカラフルで凝縮された筋金入りの美音が、このドイツのフルートからも出てきてびっくりしました。

デュフレーヌもこういう楽器を使っていたのかなというようなフルートです。
もちろん、ロット吹きとされる彼がリッタースハウゼンを使っていたと主張するものではありません(笑)。

ここらへんは国より時代の空気が大きかったといったところでしょうか。

このリッタースハウゼンは、スケールが、1960~70年代のドイツフルートとも、もちろん現代のフルートとも、全く異なっていて、慣れるのには時間が必要そうでした。

吹いている人をまず見かけませんが、ほかの個体はどんな音がするのか、今後もっと試してみたいメーカーです。

すでに多くの人が探し求めてきたlouis lotやBonnevilleは、魔改造されたものが多くなっていますが、それに比べるとRittershausenはまだ、変な改造をされていないものを比較的安く入手できるかもしれませんね。

2016年3月24日木曜日

Helmuth Hammig3本試奏

先日、某所にてHelmuth Hammigを3本吹かせていただきました。

ルイロットとともに熱狂的なファンを持つヘルムートですが、その3本を実際吹いてみると、それぞれ全く違う個性を持っていました。
どのメーカーでも個体差はあるものですが、この3本の個体差は普通のレベルを超えているのではと。

一つは、後から歌口などを改造した可能性が考えられます。
あるいは、ほとんど個人製作家なので、注文主の要望に応じてそもそもヘルムートさんが作りを変えていたり、時期で違ったりというのもあるかもしれません。

後者の部分としては、やはり管体のトーンホールがソルダードかドローンかで、音の重さ、抵抗感を始め、全然違ってくるなと感じます。
初期のソルダード・トーンホールのものは、とてもかっちりしていて、「良いもの」というのがひしひしと伝わってくる。自分が買うならこれか。
ただ、かなり直接的な音というか、音の輪郭周りのふわりとした部分は出にくく、ストイックなフルートです。

後期に当たる残り2本のドローンのほうがゆったりした音でしたが、それでも近い時期のPhilippあたりと比べると、いずれも真面目というかかっちりした音の部類になると思います。


THE FLUTE(106号)の柳沢さんインタビューを読むと、ヘルムートはソルダードのほうが良いとしつつも、次第に材料の供給が不足すると、材料を節約するためにもっぱらドローンを作り、それが集まってくるとソルダードを作った、とあります。

使用者として有名な高木綾子さんは、木綿のような音と評していますが、ヴィンテージのハンミッヒの中ではHelmuthは真面目な音で、Philippのほうがより茫洋としているかなと思います。

2016年3月18日金曜日

ムラマツのADモデル

自分にとって忘れ得ぬ感動を与えてくれた一本に1960~70年代のPhilipp Hammigがあったわけですが、ムラマツのADにもそういうものがありました。

ご存知のようにADは代替わりしてDSというモデルになりましたが、新パッドを生かすために、ネジ、シャフト、オイル・・・と全て変わったようです。

また、ADの前モデルは「スタンダード」モデルですが、製造番号が12158以前はA=440だったそうです。
ADになったときには既に12158は越えており、特注は除いてA=442が標準となっています。
SRなどは12158以前の製造番号のものがあるので注意が必要ですね。

ADは約20年(1981~2002年?)の生産時期があり、かなりマイナーチェンジしているようです。
古い時期のものは丸めの歌口で、リッププレートが凹型になっているものが見受けられます。
新し目のものは、かなりスクエア寄りの歌口となっていますね。
後々、どの年代のADはどうで・・・というのが明らかになる日も来るかもしれません。


個人的には、ムラマツのADこそが最強のプレイヤーズ・フルートではないかと思います。

「ADやDSは音大入学レベル」「総銀ならSRや海外製のものに買い換えるべき」「金の笛でないと大きなホールでは云々」など言う人もいるようですが、神戸国際フルートコンクールなど大きなコンクールで、数多の14k、18k使用者をなぎ倒しAD使用者が優勝して、ときどき話題になっております(笑)。

コンクールは抜きにしても、ドイツ・フルート好きの自分から見ても、ADは音色・スケールともに素晴らしいフルートだなと思います。

特に、新しめの時期に作られたADを吹いてみると、まずスケールに感心します。
2オクターブ目のレや3オクターブ目のレあたりは、20世紀半ば以降の欧米の楽器に共通して見られる音程の傾向を踏襲し、伝統的な奏者・奏法に配慮しながらも、その癖はあくまで控え目に抑えられており、ヘインズ的スケールとクーパー的スケールの両方に配慮したような節が見受けられます。
これはもう、数多くのトップ・プレイヤーに吹かれて研鑽してきたメーカーの特権ですね。

ADやDSと似たような新品価格で、同じようなスペックの国産フルートは多々ありますし、倍ぐらい高価な外国製もありますが、殆どはそこの部分のノウハウで大差をつけられていると言わざるを得ません。

歌口のカットもショルダー(オーバー)カット、アンダーカットを適度に抑え、吹き方に応じた音の変化を適切に行えるようにと、深く配慮されていることに感激します。
その音色の幅は、後期の歌口のほうが広いように感じます。

今からADを中古で購入した場合、旧パッドのものと新パッドのものがあると思いますが、新パッドは、金属のワッシャーのようなものがパッドの裏に入るため、単純に重くなり、その分音も重く強くなります。
フルートという小さな楽器においては、これが与える影響はかなり大きなものがあります。
個人的にはそれが無い旧パッドのほうがADらしいかなと思います。
ちなみに、Philipp Hammigなど旧東独のフルートも、この金属のものを入れている時期があります。

ムラマツはケース一つ買うだけでも「楽器に合わせてケースのクッションを微調整してお渡しします」と 言ってくれるくらい、フルートを愛する素晴らしいメーカーです。
新パッドやDSに辛らつな意見もありますが、DSも10年以上続け、対策を施し続け、安定度は増しています。
身近すぎてありがたみが分からなくなりがちですが、このようなメーカーが日本にあることに感謝するばかりです。

2015年12月6日日曜日

推定1950年代以前のフィリップ・ハンミッヒ・フルート



製造番号(31XX)から推定するに、1950年代ぐらいまでの初代Philipp Hammigが現役で、二代目のJ.G.がその下で働いていた時代のものではないでしょうか。
胴体、頭部管差込口のリングが、昔のフランスものと変わらないような形で付いています。
60年代後半以降の省略された形状がハンミッヒの代名詞のようになっていますが、もっと前に遡ると省略されていなかったんですね。

また、既にEメカや足部のローラーが付いています。

リッププレートは凹型に湾曲していて、歌口はスクェア気味ですね。
売主(フルート専門店)曰く、リッププレートはオリジナルで、歌口もリカットされていないと思う、とのこと。



音を聴くと、確かにHammigにしては昔のフレンチに近いような、あっさりした低域とハスキーで複雑な中高域。
ただ、この奏者は、ほかの音源を聴くと分かるように、楽器の特性が素直に表れるというよりは、この奏者自身の個性が強く反映した音を出す人なので、あくまで参考程度です。

2015年11月24日火曜日

リングキーのPhilipp Hammigフルート

Philippも他のドイツフルートと同じく、特に東西分裂時代はカバード・キーで知られていますが、リングキーのものを見つけました。













製造番号や、B&S、そしてMade in GDRの刻印を見ると、旧東独時代でも最後のほう、おそらく1980年代後半ではないでしょうか。

Eメカ無しなのが目を引きます。そしてポイントアーム。
それでもGAトリル付きで、プラスチックのリッププレート頭部管があるところがドイツらしいですね。

今でこそ見直される動きもあるものの、西ドイツでもリングキー使用者が増えていたと思しき当時。
輸出産品でもあったPhilipp Hammigのフルートも「リングキーのものを売ろう」となっても、状況的には不思議ではないような気がします。

以前Helmuth Hammigのリングキーが売りに出ていたとき、オリジナルか後改造かで話題になったことがありますが、この場合はどうでしょう。