2016年3月18日金曜日

ムラマツのADモデル

自分にとって忘れ得ぬ感動を与えてくれた一本に1960~70年代のPhilipp Hammigがあったわけですが、ムラマツのADにもそういうものがありました。

ご存知のようにADは代替わりしてDSというモデルになりましたが、新パッドを生かすために、ネジ、シャフト、オイル・・・と全て変わったようです。

また、ADの前モデルは「スタンダード」モデルですが、製造番号が12158以前はA=440だったそうです。
ADになったときには既に12158は越えており、特注は除いてA=442が標準となっています。
SRなどは12158以前の製造番号のものがあるので注意が必要ですね。

ADは約20年(1981~2002年?)の生産時期があり、かなりマイナーチェンジしているようです。
古い時期のものは丸めの歌口で、リッププレートが凹型になっているものが見受けられます。
新し目のものは、かなりスクエア寄りの歌口となっていますね。
後々、どの年代のADはどうで・・・というのが明らかになる日も来るかもしれません。


個人的には、ムラマツのADこそが最強のプレイヤーズ・フルートではないかと思います。

「ADやDSは音大入学レベル」「総銀ならSRや海外製のものに買い換えるべき」「金の笛でないと大きなホールでは云々」など言う人もいるようですが、神戸国際フルートコンクールなど大きなコンクールで、数多の14k、18k使用者をなぎ倒しAD使用者が優勝して、ときどき話題になっております(笑)。

コンクールは抜きにしても、ドイツ・フルート好きの自分から見ても、ADは音色・スケールともに素晴らしいフルートだなと思います。

特に、新しめの時期に作られたADを吹いてみると、まずスケールに感心します。
2オクターブ目のレや3オクターブ目のレあたりは、20世紀半ば以降の欧米の楽器に共通して見られる音程の傾向を踏襲し、伝統的な奏者・奏法に配慮しながらも、その癖はあくまで控え目に抑えられており、ヘインズ的スケールとクーパー的スケールの両方に配慮したような節が見受けられます。
これはもう、数多くのトップ・プレイヤーに吹かれて研鑽してきたメーカーの特権ですね。

ADやDSと似たような新品価格で、同じようなスペックの国産フルートは多々ありますし、倍ぐらい高価な外国製もありますが、殆どはそこの部分のノウハウで大差をつけられていると言わざるを得ません。

歌口のカットもショルダー(オーバー)カット、アンダーカットを適度に抑え、吹き方に応じた音の変化を適切に行えるようにと、深く配慮されていることに感激します。
その音色の幅は、後期の歌口のほうが広いように感じます。

今からADを中古で購入した場合、旧パッドのものと新パッドのものがあると思いますが、新パッドは、金属のワッシャーのようなものがパッドの裏に入るため、単純に重くなり、その分音も重く強くなります。
フルートという小さな楽器においては、これが与える影響はかなり大きなものがあります。
個人的にはそれが無い旧パッドのほうがADらしいかなと思います。
ちなみに、Philipp Hammigなど旧東独のフルートも、この金属のものを入れている時期があります。

ムラマツはケース一つ買うだけでも「楽器に合わせてケースのクッションを微調整してお渡しします」と 言ってくれるくらい、フルートを愛する素晴らしいメーカーです。
新パッドやDSに辛らつな意見もありますが、DSも10年以上続け、対策を施し続け、安定度は増しています。
身近すぎてありがたみが分からなくなりがちですが、このようなメーカーが日本にあることに感謝するばかりです。

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